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早期癌に対する内視鏡治療を積極的に行っております

当科では早期食道癌・胃癌・十二指腸癌・大腸癌の早期診断、治療(内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD)に特に力を入れております。治療件数は年々増加傾向にあり、2014年度には70件だった治療件数が5年後の2019年度には約2倍の128件まで増加しております。全体の半数以上が他院からご紹介いただいた患者さんです。他院からは地域の中核病院として安心してご紹介頂き、患者さんに対しては安全・安心な治療を心掛けながら日々診療にあたっております。
残念ながら内視鏡治療が不適格と判断された場合でも、外科と密接に連携を取り遅滞なく必要な手術が受けられる体制が整っております。
もちろん、当科では早期癌以外の消化管疾患診療も一通り行っております。以下に、診療内容を簡単にご説明します。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

ESDは病変を分割することなく一括で切除するために開発された治療法です。専用のナイフを用いて病変の端から少しずつ確実に剥離して大きな病変でも最終的に一括切除します。一括切除することで治療後の正確な病理(顕微鏡検査)評価が可能となり、癌が取りきれたか、どこまで深く浸潤しているかなどを判定し再発リスクや追加治療の必要性が適切に判断出来ます。再発リスクがあるような深めの癌を疑う場合は治療前に超音波内視鏡検査(細径プロープ)も追加し、より正確な診断を心掛けております。
当院では「SBナイフ」と呼ばれるハサミ型のナイフを主体として処置を行っております。ハサミ型ナイフは切開時に内視鏡を動かす必要がなく、かつ挟んだ部分が切離に適した部位であることを視認してから切開できるため安全性に優れ、術者のストレス軽減にも寄与しています。また血管を把持することで止血処置も行うことが可能です。止血専用デバイスを新たに必要としないことでスムーズな処置、コスト削減を実現しています。

早期胃癌に対するESD治療

早期大腸癌に対するESD治療

大腸ポリープ切除術(EMR、コールドポリペクトミー) 

EMRは従来から広く行われている治療法です。ポリープ直下に生理食塩水を注入し、「スネア」と呼ばれる金属製の輪をかけて高周波電流によって切り取ります。主に20mm以下のポリープに対して行います。
一方でコールドポリペクトミーとは比較的新しい治療法であり、スネアのみを用いて電流を使わずにポリープを切り取る方法です。電流による血管への余計なダメージがないことでEMRよりも術後出血が少ないと言われており、主に小さめの良性ポリープに対して行います。

大腸腺腫に対するコールドポリペクトミー

消化管ステント留置術

癌などの病気によって食道、胃、十二指腸、大腸などの消化管が狭くなり食事・便が通過できなくなった場合に「金属ステント」という金属製の網目状の筒を消化管に留置します。他の治療法として消化管バイパス術(外科手術)もあり、外科と協議しつつ適切な治療法を選択しております。

内視鏡的消化管止血術

出血性胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸憩室出血、直腸潰瘍などの内視鏡的止血処置を多数行っております。ほぼ全例、内視鏡で止血が完了しますが稀に止血困難の際には放射線治療科と連携しカテーテル治療も速やかに行える体制を取っております。

出血性胃潰瘍に対する凝固止血

大腸憩室出血に対するEBL(バンド結紮術)

内視鏡的静脈瘤結紮療法(EVL)・静脈瘤硬化療法(EIS)

食道・胃静脈瘤破裂に対して内視鏡を使ってゴムバンドで結紮、止血します。破裂予防として硬化剤を血管内に注入し静脈瘤を消失させることもあります。

食道静脈瘤破裂に対するEVL

小腸カプセル内視鏡検査

長さ26mmのカプセルを水と一緒に飲み込んで頂き、あとはカプセルが自動的に写真を撮り続け、体外に装着した機械に画像データを送信します。カプセル自体は後日便と一緒に排泄されます。胃カメラ、大腸カメラを行っても出血源不明の消化管出血を主な対象としており、当院でも積極的に検査に取り組んでおります。

潰瘍形成した小腸粘膜下腫瘍

小腸内視鏡検査 

当院では主にカプセル内視鏡で発見された出血源や腫瘍に対しての止血処置・精査として行っております。小腸内視鏡を常備している施設は決して多いとは言えず、近隣施設からも小腸の精査目的に多数のご紹介を頂いております。

小腸内視鏡によるクリッピング止血処置

その他(異物除去、イレウス管留置など) 

消化管治療文責:金沢