手術実績:前立腺癌
手術実績:前立腺癌
(2021年度 前立腺生検:332例 ロボット支援下前立腺全摘術: 84例(うち神経温存60例))
男性は50歳を過ぎたら一度は血液検査でPSA(前立腺特異抗原)を調べてみませんか。
PSAはProstate Specific Antigen(前立腺特異抗原)のことで、前立腺から分泌される蛋白分解酵素です。前立腺とは男性にのみ存在し、膀胱の下で尿道をくるむようにして存在する臓器で精液の成分を作っています。PSAは精子が体外に放出される時に精液中のゼリー状の蛋白を分解して精子の運動性を高める役割を果たします。したがって、健常男性であれば血液中にPSAが浸出することは非常に稀で、健常者のPSA濃度は0.1 ng/mL以下です。しかし、前立腺に疾患があると血液中にもPSAが浸出し、数値が上昇します。この数値は前立腺肥大症でも軽度上昇します。
ゼネカ薬品株式会社 患者説明用フィルム 泌尿器系の疾患より抜粋
日本でも年々、前立腺癌は増加しています。米国では癌による死亡の原因の第1位となっています。
当院で2010年度に前立腺癌の疑いで検査を行ったのは365例、うち癌が判明したのは195例でした。
診断
PSA高値が続く場合や、直腸からの触診で硬い部分を認める場合、脊椎麻酔を施行し直腸から超音波を挿入し、前立腺を確認しながら、経会陰的に12〜24ヶ所の針生検を行います。入院期間は2泊3日を要します。尿が出なくなるリスクが高い方、高齢の方の場合には3泊4日をお勧めしています。生検で採取した組織の病理検査にて癌の有無を確認し、前立腺癌を確定します。前立腺癌の検査は直腸診やMRIなどで補助的診断を行いますが、前立腺生検を行わないかぎり癌の診断は不可能です。
治療方針
前立腺癌と診断された場合、外来通院で骨盤のCT・前立腺のMRI・骨シンチグラムといった検査を行っていただき、癌の進展度を診断します。
CTにて骨盤内のリンパ節転移の有無、他臓器のスクリーニングを行います。
前立腺癌は骨に移転しやすい癌ですので、骨への転移を調べるために、骨シンチグラムも行います。MRIで前立腺周囲への癌の広がりが判ります。
画像診断と病理組織結果の前立腺癌細胞の悪性度(Gleason score)をもとに以下のうちから治療方針を決定します。
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手術(当院では通常75歳以下を目安に適応があればロボット支援下前立腺全摘を施行します。手術時間は勃起神経温存を行わない前立腺全摘で2~3時間程度です。積極的に勃起神経温存手術を行っています。)
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放射線治療(当院では3D-CRTやIMRTを施行します。ご希望の際には小線源療法、重粒子線療法を行っている施設へ紹介させていただきます。)
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ホルモン療法(小さな高分化癌やご高齢の場合に治療選択枝として考慮します。低分化癌は内分泌療法が効きにくく効果の持続が短いので、可能な限り手術を勧めます。)
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積極的経過観察(病理結果の悪性度が低く、癌の出た生検本数が少ない場合には1年後の再生検を行うことを了承のもと、PSA経過観察を行います。
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早期癌・低リスク群-手術、放射線治療、積極的経過観察(PSA経過観察および1年後の再生検)または内分泌療法を行います。若年の方は長い予後が予測されるため手術など積極的治療をおすすめします。
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早期癌・高リスク群-手術で出来る限り切除を勧めます。
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局所進行癌-放射線・手術・内分泌治療あるいはそれらの併用を勧めます。
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転移癌-内分泌療法を勧めます。ホルモン抵抗性前立腺癌となった際にはドセタキセルを中心とした抗がん剤治療を行います。
手術:
ロボット支援下前立腺全摘術を行います。神経温存を行う場合や腹部手術の既往があり癒着が予想される場合は出血量が多くなることがあるため、あらかじめ自己血(400mlの自分用の輸血を確保)を用意します。自己血をあらかじめ用意することにより、同種輸血(献血によって得られた血液)を行うリスクは少なくなっています。 前立腺生検の病理結果を検討し、可能な場合には積極的に勃起神経の温存手術を行っています(2012年は21例)。 リンパ節への転移がある場合も、1個のみの場合手術をした方が予後はよいという当院の成績もあり、治療法選択の際には患者さんの年齢・健康の状態により積極的な治療法をお勧めすることがあります。
内分泌療法:
患者さんの状態/希望を考慮し、持続療法と間歇療法を取り入れています。6ヶ月から1年の間、順調にPSAの低下を認めた場合にはホルモン療法を一時中止し、PSAの上昇を確認後、ホルモン療法を再開するというものです。薬剤の効果の持続、医療費の負担の軽減、合併症の減少を目的として行っています。
治療成績(2016年度)
ロボット支援下前立腺全摘術:119例
放射線:当院でマイクロトロン外照射(3D-CRT) 25例
前立腺IMRTの実績 2015年1月~12月 治療件数 39件
小線源治療が必要な場合は他院への紹介を行っております。
その他、内分泌療法や積極的経過観察を行っています。
上記治療に抵抗性前立腺癌となったり、転移を来たした場合には抗がん剤治療を積極的に行っています。ドセタキセルを使用した治療成後はほぼ全例でPSA低下を認め、57%にPSA50%以上の低下を認めました。
予後
既に転移がある場合でも、1年で95%、2年で70%、3年で50%の生存率です。手術を行った患者さんの予後は一般的に良好で、r5年後のPSA再発率は15%程度です。
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