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内分泌疾患について

内分泌疾患について

体の中には「ホルモン」と言われる化学物質があり、いくつかの臓器で作られて血液中を流れて体の色々な場所で働きます。ホルモンの作用は微量(“50mプール一杯の水(血液)に、スプーン一杯程度のホルモン量”)で発揮され、とても繊細な調節が体の中で行われていますが、必要な時に必要な量のホルモン分泌が行われないと色々な症状が現れてしまいます。ホルモンが働きすぎる状態の“機能亢進症”と不足する“機能低下症”がよく知られた状態で、その多くはホルモンを作る内分泌腺と呼ばれる臓器に起こる腫瘍などが原因となった病気で、これらが「内分泌疾患」と総称されています。ここでいくつかの病気について解説します。

1.副腎の病気の診断と治療

副腎の代表的な病気は、原発性アルドステロン症とクッシング症候群、褐色細胞腫です。この中で患者さんの多い原発性アルドステロン症とクッシング症候群について説明いたします。

1-1.原発性アルドステロン症

当院での調査により、高血圧患者さんの10人から20人に一人がこの病気が原因で高血圧になることが判明しています。この中の2/3の患者さんが手術で治る可能性のある原発性アルドステロン症です。副腎は左右2つあるため、手術による治療を希望される患者さんは、どちらの副腎を手術で治療するかを副腎静脈採血検査で決定します。現在当院だけで可能な超選択的採血法の診断により、今まで片側副腎を全部手術で切除していた患者さんの約半数が、当院泌尿器科で行っている片側の副腎の一部を切除する手術で治療することができるようになりました。また当院の副腎手術は、通常おへその下の小さな一カ所の切り傷で手術が可能です。この単孔式腹腔鏡下副腎部分切除が可能な施設は現在当院だけです。

1-2.クッシング症候群

「満月病」として知られている病気で、顔や体が太り手足が細くなります。そして高血圧や糖尿病を合併し、長く放置すると骨折や重症の感染症の原因となります。原因となる副腎腫瘍を手術で取り除きます。クッシング症候群の約半数の患者さんに原発性アルドステロン症を合併することがありますので、外来の検査でクッシング症候群と原発性アルドステロン症の合併が疑われる場合は、超選択的副腎静脈採血により手術法を決定します。単孔式腹腔鏡手術で副腎腫瘍または片側副腎全部を切除します。

副腎の病気の検査と治療の流れを以下に示します。

2.甲状腺疾患

甲状腺は喉仏の下にあって蝶のような形の内分泌腺で、甲状腺ホルモンを出しています。普段は鏡で見ても自分では気付かない臓器ですが、ここの病気は、①甲状腺ホルモンの量(多過ぎ、または不足)に問題がある状態、②甲状腺自体にしこり(良性、または悪性)ができる病気、の二つに分けることができます。

2-1.甲状腺機能亢進症(大部分がバセドウ症)

甲状腺ホルモンが出過ぎた状態が続いたときの症状には、下記のようなものがあります。

  • よく食べているのにやせてきた
  • 暑さに弱くなり、水をよく飲み、汗をたくさんかく
  • 動くと直ぐに息があがってしまう
  • じっとしていても、心臓がドキドキする
  • 手指が細かく振るえて困る
  • イライラしやすくなった、落ち着きがなくなった
  • 月経の間隔が短くなった
  • ふくらはぎが浮腫みやすくなった
原因 最も多いものがバセドウ症で、女性に多く見られます。
検査・病状 血液検査や超音波によって診断されますが、100人に1人くらいは、シンチグラフィーなどの検査も必要になります。上記の症状以外に、バセドウ症眼症や心房細動、周期性四肢麻痺、骨粗鬆症などが合併することもあります。
治療 薬物治療はメルカゾール®が良く効きますが、症状改善を実感するまでは1〜2週間以上かかり、注意するべき副作用がいくつも知られています。また、減らしたり中止したりして再発することもよくあり、大部分の方は数年間は服用することが必要なので、治療前に担当医からよく説明を受けて下さい。
薬物治療でうまくいかない時には、手術療法や放射性ヨード(アイソトープ、RI)治療を行いますが、当院で扱えるRIは1種類ですので、甲状腺の腫れが小さい方に限られます。
2-2.甲状腺機能低下症(大部分が橋本病)

甲状腺ホルモン不足の状態が続いたときの症状には、下記のようなものがあります。

  • 寒がりになって冬が苦手になった
  • 肌が乾燥しやすくなり、カサカサになりやすい
  • 体が重く、気分もしずみがちになった
  • 便秘をしやすくなり、太りやすくなった
  • 昼間も眠く、居眠りをするようになった
  • 月経が不順になった
原因 女性に多く、大部分が橋本病です。
検査・病状 ホルモン不足が長期にわたると甲状腺は大きく腫れやすくなり、上記の症状以外にも肝機能異常や心臓肥大が起こります。放置し続けるとコレステロールが増加して動脈硬化が早く進行しますが、妊婦では胎児発育に影響がでる可能性もあるようです。
治療 自分の甲状腺が出せなくなった甲状腺ホルモンを薬で補うことで、チラーヂンS®を飲み続けます。
高齢者や心疾患のある人、長く放置していた人は、少ない量から飲み始めて慎重に増やしていきます。
妊娠中には必要量が増えますので、妊娠予定の方はあらかじめ相談しておくことをお勧めします。
2-3.甲状腺のしこり(腫瘍、結節)

自分で気付くよりも、“首の腫れ”を他人に指摘されたり、他の検査(頸動脈エコーや上半身のCT/MRI)で偶然見つけられることが多いものです。大部分は良性で、悪性であっても多くは根治が期待できますが、数十人に1人くらいは甲状腺癌の方がいますので、エコーや細胞診を用いて調べます。

種類 嚢胞(液体が貯まった“ふくろ”のようなもの)、良性腫瘍(腺腫)、悪性腫瘍(乳頭癌、濾胞癌、悪性リンパ腫など)、腺腫様甲状腺腫(「腺腫」に似た「過形成」、“良性結節“)
症状 ほとんど自覚症状がありません。(喉はデリケートなので、病状とは無関係に“気にし始めるとずっと気になります”)
検査 エコーや細胞診、血液検査を行いますが、大きなしこりや胸の方まで繋がっている人はCTも撮影します。
治療 悪性が疑われる状態になれば、手術をお勧めしていきます。

内分泌疾患について

下垂体は脳の一部で、鼻の奥に近いところにあって、小指の頭くらいの小さな内分泌臓器です。「ホルモンの司令塔」とも言われ、甲状腺や副腎、性腺などの内分泌臓器をコントロールし、成長ホルモン(GH)や抗利尿ホルモン(ADH)など多数のホルモンを出しています。このため、この場所に腫瘍や炎症が起こると様々な症状が出て、脳外科や眼科・婦人科・泌尿器科などとの連携のもとに繊細な治療が必要になってきます。そこで厚生労働省は、下垂体疾患の一部を公費負担の対象疾患(国の難病対策-「特定疾患治療研究事業」の対象疾患『間脳下垂体機能障害』)に認定しています。 詳細は難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/entry/513)をご覧下さい。

疾患名 難病情報センターリンク
3-1.PRL分泌異常症 http://www.nanbyou.or.jp/entry/176
3-2.ゴナドトロピン分泌異常症 http://www.nanbyou.or.jp/entry/104
3-3.ADH分泌異常症 http://www.nanbyou.or.jp/entry/49
3-4.下垂体性TSH分泌異常症 http://www.nanbyou.or.jp/entry/64
3-5.クッシング病 http://www.nanbyou.or.jp/entry/78
3-6.先端巨大症 http://www.nanbyou.or.jp/entry/138
3-7.下垂体機能低下症 http://www.nanbyou.or.jp/entry/63