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心臓植込み型電気的デバイス 植込み型除細動器と自動車運転について

自動車の運転に関して

ICD(植込み型除細動器)/CRT-D(両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)は残念ながら重症心室性不整脈が起こらないように予防する機械ではありません。もし心室細動や心室頻拍が起きてしまったときに、それらを速やかに停止させ正常のリズムに戻す機械です。したがって命は救ってくれますが、一時的に気が遠くなったり、一瞬失神したりする可能性は残ります。もし自動車を運転中にICD/CRT-Dが作動するような不整脈が生じると、大きな自動車事故に発展する可能性もあります。わが国においては道路交通法で意識を失うような病気(不整脈にかかわらず)の患者さんの自動車運転は原則的に禁止(免許交付の拒否・保留・取り消し・効力の停止)されております。実際のICD/CRT-D植込み患者の運転可否に関する基準は、日本不整脈心電学会・日本循環器学会・日本胸部外科学会の合同検討委員会により定められた具体的運用指針により以下のように示されており、下記の条件を満たす場合に「運転を控えるべきとは言えない」という診断書を発行することが可能です。2017年に改訂がなされ以前よりは運転禁止時期が短くなっています。

初回植込みに関しては、植込み前に心室頻拍・心室細動やそれに伴う意識消失の既往がある患者さんに対する植込み(いわゆる二次予防目的の植込み)の場合、6ヶ月間の経過観察(運転停止)期間が設けられます。この経過観察期間中に意識消失や作動がなければ運転可能となります。一方で植込み前に心室頻拍・心室細動やそれによる意識消失の既往のない予防的植込み(いわゆる一次予防目的の植込み)患者さんの場合、7日間意識消失や作動がなければ運転可能と定められています。ここで言う作動とは、電気ショックを伴う除細動作動があった場合だけでなく、自覚症状を伴わない抗頻拍ペーシングであっても作動に含まれ、さらに心室細動や心室頻拍などの致死性不整脈に対する適切作動だけでなく、心房細動などの上室性頻拍等に対する不適切作動も含まれます。ただし、不適切作動の場合は意識消失がなければ運転禁止期間はありません。
電池消耗や故障に伴うジェネレータ本体の交換に関しては、交換の時点で運転が許可されていた方の場合7日間、リードの交換や追加を行った場合も7日間観察の上作動がなければ運転が許可されます。
一方、意識消失もしくは作動があった場合には作動から3ヶ月間は運転停止となります。作動後の観察期間中に再度作動があれば、その時点から3ヶ月運転停止期間が延長されます。
また、中型免許(8t限定を除く)・大型免許や、旅客を輸送する第二種免許などの職業運転は、意識消失発作やICD/CRT-Dのショック治療が重大な事故に結びつく可能性があるため許可されておりません。