心臓植込み型電気的デバイス 植込み型心電図記録計(ICM)
植込型心電図記録計(implantable cardiac monitor;ICM)移植術
失神とは
一過性の全脳虚血による意識障害、つまり、一時的に脳全体に血がいかなくなることで意識が失われる、または立っていられなくなることです。失神は突然起こり、失神している時間は短時間で、自然に、また完全に回復するのが特徴です。てんかん発作や脳しんとうなどのほかの意識障害と見分けることが必要です。失神は病名ではなく、色々な病気が原因となって引き起こされる症状です。失神を起こす原因によって治療法が違うため、原因の特定が重要です。
失神の主な原因疾患と治療方法
失神の原因として大きく以下の4つが言われています。
失神の原因疾患の大多数は予後良好な神経反射による失神(神経反射性失神)ですが、約15%に恐ろしい心臓の病気が隠れているこという報告があります。これをみつけるために適切な検査を行い、早期の治療を開始することが重要です。
1.神経反射性失神
横になった状態または座っている状態から立った場合、血液や体液は重力に従って下半身に移動します。通常であれば、自律神経が下半身の血管を収縮させ、心臓を速く打たせることにより、脳への血流が減少するのを防いで、失神はしません。しかし、自律神経のバランスが崩れると血圧や血管の収縮のコントロールが一時的に乱れて脳に血液がいかなくなり失神します。たとえば、満員電車や学校の朝礼などで、ずっとたちっぱなしで失神する場合、または献血するときに強い緊張や恐怖があって失神してしまう場合など、この自律神経の調節の異常が関与しているとされています。
神経反射性失神は基礎疾患のない健康な人にも多く発症するのが特徴で、様々なストレス下で発症することが知られており、一種のストレス性疾患とも考えられています。その生命予後は失神発作のない健常者と同じで良好です。しかしながら失神による転倒時の外傷、自動車運転の制限、高所や危険を伴う場所での就労上の制約を受けるなど、日常生活のQOL(生活の質)の低下を招くことが多いことが問題となっています。
2.起立性低血圧
立ち上がった直後に下半身に血が移動してしまい、一時的に脳に血がいかなくなり失神します。ほとんどは服用している血圧の薬や利尿剤による副作用ですが、まれに自律神経の病気が原因のこともあります。
3.心原性失神
心臓に何らかの問題があって、脳に血を送り出せなくなり失神します。
4.脳血管疾患
失神の原因となっていることはごく稀です。
埋込型心電図記録計(implantable cardiac monitor ; ICM)の目的
よく失神するけど原因がわからない、病院でいろいろな検査をしたけれども原因がわからなかったという場合が適応です。またこの機械は原因不明の脳梗塞において原因となる不整脈が心臓にないか調べるためにも使用されます。ICM は、左胸の皮下に植え込むだけのとても薄い医療機器です。ICM は、1 ヶ月に1 回起こるか起こらない程の頻度の低い失神が起こった時の心電図を観察するために使用します。この小さな機械は電池寿命が約3 年で、その間植え込んでおくことが可能です。ICM を植え込み、心臓のリズムを継続してみることにより、失神発作の原因が心臓の病気なのか、その他の病気なのかを調べることができます。
植え込み術の方法(含麻酔法)
手術は局所麻酔下で行われます。皮膚の切開も1cm 程度で10分程度で終了する簡単な手術です。念のため、手術した部分の感染を予防するために、術後に抗生剤を服用することがあります。植込み後、専用のプログラマという機械を使って、不整脈を見つけるための設定を行います。この設定は数分で終わり、無線通信で行われますので痛みなどはまったくありません。
植え込み術 術後の経過・処置・注意点
創部がつけばいつも通り入浴できます。生活に制限はありません(ただし病状により制限が必要な場合があります)。
不整脈が起これば、ICM は自動的に心電図を記録します。また、失神した後、もしくはめまい、動悸などの症状を感じた際に、「アクティベータ」という小さなリモコンを胸にあててご自分で記録することで、不整脈が起こっていなくても心電図を記録させることができます。このアクティベータを胸の上にあててボタンを押すと、ICM は、ボタンを押した時点より前まで時間をさかのぼって心電図を記録し始めます。これは症状が起こっている間か、意識を失って回復してからできる限り早く行ってください。さかのぼれる時間には限りがあります。症状がある間や失神中の心電図を記録させることが大切です。いつでも記録できるように、アクティベータは常に携帯しておくことが大切です。これらの記録された心電図をみることで、隠れていた心臓の病気をみつけることができるかもしれません。この記録は病院でプログラマと通信させることで医師が確認することが出来ます。また遠隔モニタリングシステムの使用が可能です(詳細は「遠隔モニタリングシステムについて」の項をご参照ください)。
植え込み術を受けなかった場合、めまい・意識消失・失神の診断がつかず、治療が出来ない可能性があります。代替の検査としてはHoler心電図(24時間心電図)がありますが、24時間のうちに不整脈が出現しなければ原因の特定が出来ないため、現在の状態を考えるとICMがより診断には強力なツールであると考えられます。
植え込み術を受けなかった場合の見通し、他の治療法
植え込み術の危険性・合併症
局所の出血・血腫や感染の可能性はわずかにありますが、その他の合併症はほとんどありません。
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