メール相談から学ぶ働く人のメンタルヘルス(第42回) 2023年7月26日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
- ※新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、タイトルを一新しました。今後はより広い形で、働く人のメンタルヘルスについて発信していきます。
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事例㊷ コロコロ意見が変わる同僚がいて困っています。
(相談者 男性 30代 開発職)
【相談メール】
気分によってコロコロ意見が変わる同僚がいます。チームで話し合い、資料を必死に作っていたら「やっぱりそれは使わずにやろう」と言われたり、ひどい時には共有したことすら「そんな話したっけ?」と忘れられることもあります。発達障害か何かなのでしょうか?一度きちんと診てもらった方がいいと思うのですが。
【回答メール】
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お困りのご様子、伝わってきます。
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どんなに手を尽くしたところで、相手がどう変わるかは相手次第。とはいえ「泣き寝入りをしろ」ということではありません。
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こちらが意識した方が良いことに「疾病性」と「事例性」というものがあります。精神医学でいう「疾病性」とは症状や病名に関することで、専門家が判断する分野です。対して「事例性」とは、実際に目に見える客観的事実を指します。
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今回の場合に当てはめると「発達障害かもしれないから診てもらった方がいい」という視点は「疾病性」です。そう伝えられたところで行動に移そうとは思えないでしょう。
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職場の同僚としては「事例性」の視点が重要になります。具体的な業務への支障をあげて説明するのです。業務量や残業の増加、効率や質の低下、対人トラブルなど、実際に目に見える形で生じている問題について挙げ、その改善方法を話し合うのです。
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そのうえで、もしも同僚がそんな自分の性格に困っているということなら、初めて「専門家に診てもらおう」という話になります。
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一方的に注意するのではなく、お互いを尊重し、現実的な改善方法を考えていけば、いい妥協案が見つかるものです。まずはあなたが相手の意見を尊重することで、相手もあなたの意見を尊重してくれるようになるはずです。
【対応のポイント】
インターネットで誰でも調べ物ができる時代、「あの人(もしくは自分)は○○障害ではないか」とおっしゃる方がとても増えた印象です。ただ、実際の診断は、専門性を持ってしても簡単なことではありません。もちろん診断され適切な支援を受けることも大切ですが、現実的には、目に見える問題への対処方法をともに考えることも有益でしょう。
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※ 実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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勤労者こころのメール相談(mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)
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