メール相談から学ぶ働く人のメンタルヘルス(第41回) 2023年6月28日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
- ※新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、タイトルを一新しました。今後はより広い形で、働く人のメンタルヘルスについて発信していきます。
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事例㊶ 「昔話や自慢話ばかり」だと言われ気にしています。
(相談者 男性 50代 管理職)
【相談メール】
同僚から「あなたは部下に対して昔話や自慢話ばかりしている」と注意されました。同僚に言わせると、私は相手の話を遮って昔の自分の自慢話をすることが多く、とても失礼だというのです。私としては、その業務の意義や背景を伝えたり、自分なりに若者に共感しようとしたりと、実りのある話をしているつもりです。ただ、迷惑がられているのならショックです。どうすれば直せますか。
【回答メール】
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お悩みのご様子、伝わってきます。
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改善のために努力しようとするあなたの姿勢は立派です。また、はっきり指摘してくれる良い同僚(仲間)を持ちましたね。
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さて、「きく」という言葉に漢字を当てはめると「聞く」「訊く」「聴く」などがあります。
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「聞く」は耳で音声情報を受け取ること、「訊く」は問いただすという意味が含まれます。
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そして「聴く」はいわゆる「傾聴」のこと。相手の声に耳を傾けることです。相手を尊重し気持ちを理解しようという意識を持つことがポイントです。
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もちろん、自分の話をしてはいけないということではありません。相手を大切にするあまり自分の思いをきちんと伝えられないのもストレスです。
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具体的な「聴く」ポイントとしては、
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①口を挟まずじっくり聴く
②相手の目を見る
③相づちを打つ
④答えるときは自分もゆっくり話す
⑤わからない時は「理解したいので教えてほしい」という姿勢で質問する
などがあげられます。
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当たり前のことのようですが、カウンセラーのように、「聴くことのプロフェッショナル」が存在するほど。簡単ではありません。
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たとえば、じっくり聞き、相づちにも気を配っていれば、相手が話し始めようとしたところに割って入ってしまうことは少なくなります。
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意識しつつゆっくり話していれば、たとえこちらの言葉と相手の言葉が被ってしまっても、すぐに気づき、引くこともできるでしょう。
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逆に、こちらで勝手に解釈して、自分が話したいことで頭がいっぱいになってしまうと、相手の言葉と被ったり、怪訝な表情を浮かべていても、それらを見逃してしまいます。
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最初はうまくいかなくても、必ず効果があらわれてきます。ぜひ試してみてください。
【対応のポイント】
誰もが若い頃は「昔話や自慢話ばかりする上司にはなりたくない」と思ったことでしょう。しかし、若者のためを思えばこそ、自分の体験や教訓を伝えていきたくもなるものです。すべては「良かれと思って」のことなので、それが尊重されたうえで具体的なアドバイスがあれば、ご本人の力で良い方向に変わっていくでしょう。
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※ 実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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勤労者こころのメール相談(mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)
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