メール相談から学ぶ働く人のメンタルヘルス(第40回) 2023年5月26日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
- ※新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、タイトルを一新しました。今後はより広い形で、働く人のメンタルヘルスについて発信していきます。
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事例㊵ がん治療を知られたくありません。
(相談者 男性 50代 会社員)
【相談メール】
がんが見つかり、職場とも話し合い、働きながら抗がん剤治療を始めることになりました。副作用で多くの場合髪が抜けるというのですが、周囲には私ががんになったことを知らない人もいます。ウィッグもあるとはいえ、急にウィッグに切り替えるのも不自然なように思い、勇気が出ません。周囲に心配をかけないようにするにはどうすればいいのでしょうか。
【回答メール】
時代は、「がんと闘う」から「共に生きる」へと変わりました。最善の治療を受けることで、仕事を続け、長寿を全うすることも可能です。医療や科学の進歩は想像以上のものがあります。
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ウィッグ(かつら)についても同じことが言えます。いまのウィッグには極めて自然なものや、おしゃれなものが多くあります。ウィッグだと言わなければ、単に髪型を変えただけだと思われるほどです。
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となると、あとはウィッグを使っている自分自身を受け入れ、いかに前向きに考えられるか―が重要です。
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たとえば、気分によってウィッグを替えるなど、新たなおしゃれアイテムとして楽しめるようになった―と考えてもいいでしょう。
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マイナス思考の人は常にネガティブに考えてしまいがちですが、その思考をプラスに転換すると、いまとこれからを明るく、希望をもって過ごすことができます。
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モノの見方、考え方の違い一つで、今後の振る舞い方や生き方が変わってくるのです。
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また、体に差し障りがない範囲で、仕事に集中したり趣味に没頭するなど、何か他の大切なことに関心を向けることも大切です。次第にありのままの自分を受け入れられるようになっていくはずです。
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ただし、治療の中で、どうしても体調が思わしくない時には、無理して隠さず、きちんと周囲に頼ることも必要です。
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治療をしながらの就労を応援してくれる良い職場だと推測します。治療と就労を両立させ、周囲にとっての良いモデルとなってください。
【対応のポイント】
かくいう私も、1年半前にがんの手術を受け、抗がん剤を飲みながら仕事をしていますが、メンタルヘルスの観点からは、自信を持って「健康だ」と言うことができます。周囲のサポートに感謝しつつ、日々生きがいを感じられることがその秘訣です。治療と就労の両立支援が当病院の重要な役割なので、私自身がそのモデルケースになるよう、やりがいを持って働き続けたいですね。
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※ 実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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勤労者こころのメール相談(mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)
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