メール相談から学ぶコロナ感染拡大時におけるメンタルヘルス(第34回) 2022年10月20日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
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事例㉞ なじみの店がどんどんつぶれていきます。
(相談者 男性 60代 会社員)
【相談メール】静かなお店が好きで、行きつけのバーやレストランがあったのですが、コロナの制限がありなかなか行けず、その間に閉店してしまいました。数十年の付き合いだった理髪店も、店主が引退するからと店を閉めるそうです。昔から人付き合いが苦手で、勇気を出して出向き、長い時間をかけてなじみの場所にしてきたのにショックです。
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【回答メール】
自分にとって大切な対象を失うことを「喪失体験」といいます。
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その対象は人物だけではありません。仕事やお金、場所なども当てはまります。思い描いていた生活イメージが崩れてしまうわけですから、そこに生まれるストレスは小さくありません。
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どの年代も喪失体験はありますが、年齢を重ねていくにつれてその機会は増えるものです。そして、複数の喪失体験が相互に影響し合うことで、ストレスは大きくなっていきます。
あなたの場合であれば、コロナ禍による制限でバーやレストランに行けなくなったことがまずストレスだったでしょう。
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そして閉店によって二度と行けなってしまったという喪失感、理髪店の閉店という偶然も重なり、他の店を探したり新たな人間関係を作ることへの不安が生じ、次の行動を起こしづらくなるという悪循環が予想されます。
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しかし、ものは考えようです。ピンチはチャンス。チャンスはチャレンジ。チャレンジはサクセス。このピンチは、新たなストレス解消方法を身に着けたり、新たな人と出会うチャンスなのです。
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新しい店の開拓は、以前勇気を出せたあなたならきっとできるはずです。どうしても足が向かないようなら、たとえばバーやレストランに代わり、家での食事時間を充実させられるよう、少しこだわってみましょう。
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髪はこれを機に自分で切ってみても良いでしょうし、ご家族に頼むことで新たなコミュニケーションが生まれることもあるかもしれません。
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最初はうまくいかないと感じることでも、習慣化する中で見えてくるものもあります。そのためには、焦らないこと、諦めないこと、怠らないことが大切です。
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【対応のポイント】
以前も書きましたが、コロナ禍のピンチのいくつかは、老後の環境変化や生活のあり方の問題と似ています。コロナ禍によってそれが前倒しになって訪れているということになりますが、これとて、元気に動ける今のうちに取り組め、老後に備えることができたと前向きに捉えることもできます。70代の私とて例外ではなく、まったく理髪店に通えなかったときは思い切ってロングヘアにチャレンジするなど、楽しく過ごせるよう心がけています。
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※ 実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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勤労者こころのメール相談(mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)
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