メール相談から学ぶコロナ感染拡大時におけるメンタルヘルス(第29回) 2022年4月21日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
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事例㉙ 医療従事者です。再感染におびえています。
(相談者 女性 30代 医療職)
【相談メール】
職業柄特に気をつけていましたが、一度コロナに感染しました。症状としては軽症でしたが、勤務先の病院に迷惑をかけてしまったことに落ち込みました。その時も今も私を責める人は誰もいませんが、それ以来、少しでも体調に異変を感じると「コロナかも」と不安になり、食欲が落ちたり不眠になります。もともと心配性なところもありますが、私ほど気にしている人は周りにいません。この感情から逃れるには退職するしかないのではと思うこともあります。感染することにこんなに不安を感じるのは異常でしょうか?
【回答メール】
お悩みのご様子、伝わってきます。
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コロナ禍で医療従事者としてお仕事をされていること、仲間として誇りに思います。
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さて、人生で起こる出来事(ライフイベント)とストレスとの関係について、ライフイベントを点数化したある研究によると、たとえば「結婚」によるストレス度は100点満点中50点です。望ましい出来事か否かにかかわらず、慣れ親しんだ状況からの変化はストレス要因となることがわかっています。
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つまり、不安や恐怖を感じるというのは、“異常”な状況に対する“正常”な反応なのです。
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ましてや実際に罹患した経験があるのですから、よりその気持ちが強くなることは自然でしょう。むしろ不安や恐怖を感じるからこそ、感染対策のための行動を取ることができる、とも言えます。
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個人による基本的な感染対策に加え、病院ではビニールカーテンの設置やフェイスシールドの着用など、より厳格な対策が行われているはずです。あなた個人も、そして病院も、適切な感染対策を講じているということを信じてください。
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ただ、どんなに気を付けていても罹患することはあり、重症化やクラスターを防ぐというまさに「ウィズ(with)コロナ」の時代になりつつあるのも現実です。
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不安や恐怖による心身の不調が見られ、日常生活に支障があるようなら無理をせず、一度メンタルの専門医(精神科医や心療内科医)を受信することをお勧めします。
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専門家の力を借りることで、不安を和らげたり、不安解消の方法や安心感を得る方法に気づいていくことができます。
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あなたは頑張り屋さんで、責任感の強い、素敵な医療従事者だと感じます。退職を考えることもあると書かれていますが、このコロナ禍で患者さんのため、病院のために、あなたはなくてはならない存在です。お仕事を続けていただくことがあなた自身にとっても必要だと思います。
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独りで悩まず、またいつでも相談してください。
【対応のポイント】
医療従事者からのメールも多く受け取りますが、最前線で戦うエッセンシャルワーカーに対する尊敬や労いの気持ちが少しでも伝わるよう心がけています。「できる人ほどうつになる」という言葉がありますが、相談メールを送ってくるような方々こそ、本当に素晴らしい人財であり、ぜひ活躍していただきたいという思いで書いています。
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- ※実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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勤労者こころのメール相談(mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)
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勤労者メンタルヘルスセンター山本晴義センター長(心療内科医)が自らお答えするメール相談です。年中無休の24時間、無料でお受けしており、原則24時間以内にご返信いたします。
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