メール相談から学ぶコロナ感染拡大時におけるメンタルヘルス(第23回) 2021年9月10日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
事例㉓ 習い事を辞めさせようとする親への対応。
(相談者 男性 50代 小売業)
【相談メール】
趣味で武道の指導をしています。小さな頃から面倒を見てきた教え子(小学生)の母親が、「コロナ禍なので辞めさせたい」と言ってきました。もちろん感染対策には気をつけていますし、一旦休会してコロナが落ち着いたら再開することもできます。何より、当の本人は続けたいと言っていますが母親は聞く耳を持ちません。教え子がかわいそうです。どうにか母親を説得できないものでしょうか?
【回答メール】
あなたの言う通り、一番大切なのはその子自身の気持ちです。ただ、小学生という年齢を考えると、当人に代わって、親が責任を持って物事を決めることが必要な場面もあるでしょう。
母親の立場で考えると、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、外出や他人との接触を回避したいと思うのは当然のことです。もしも感染したり、万が一のことがあったら「習い事にさえ行かせなければ…」と後悔するかもしれません。たとえ休会しても、いつ再開できるか全く見通しが立たない状況です。それならば、辞めることを考える気持ちはわかります。
指導者としてのあなたの思いも決して間違ってはいません。ただ、気になるのは「母親は聞く耳を持たない」と書かれている点です。
これはあなたも同じことで、母親の方も「指導者が聞く耳を持たない」と思っている可能性があります。どちらかが正しいという前提で話すと、今回のトラブルは解決しづらくなります。その子を思う気持ちに優劣はないからです。
まずはあなたが、母親の言うことに聞く耳を持つことから始めましょう。母親の意見も尊重した上で、指導者としての意見を時間をかけて母親に伝えてみてください。
相手を尊重したやり取りによって、母親と子ども、そしてあなたの3人が納得のいく結論にたどり着くはずです。
【対応のポイント】
人間関係のトラブルは、見ようによってはどちらの言い分も正しく、明確な正解がないことも多いものです。であるならば、変わるかどうかわからない相手に働きかけるのではなく、自分が変わることが解決の近道です。自分も相手も尊重したかかわりによって必ずや良い結果に結びつくでしょう。
※ 実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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