メール相談から学ぶコロナ感染拡大時におけるメンタルヘルス(第22回) 2021年8月6日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
事例㉒ マスクを着けられず困っています。
(相談者 女性 30代 接客業)
【相談メール】
幼い頃マスクを着けた顔をからかわれ、いじめられたことがあり、それ以来マスクを着けたり被り物をすると呼吸ができないほど息苦しくなります。そのためコロナ禍でも、マスクもフェイスシールドもできず、まったく外出できません。仕事にも行けず、心療内科を受診しようにもマスクをしていないので受診できません。どうすればよいのでしょうか?
【回答メール】
お困りのご様子、伝わってきます。マスク着用は、有効な感染対策であると同時に、もはや「マナー」となりつつあります。マスクを着けていないことで、周囲から冷ややかな目で見られたり、心無い批判を受けたりすることもあるかもしれません。
「マスクを着けたくても着けられない」事情がある方は少なくありません。たとえば、発達障害、感覚過敏、脳の障害、皮膚の病気、呼吸器の病気、そしてあなたのようにメンタル面の要因などがあげられるでしょう。
WHOによると「発達上の障害、その他の障害、またはその他の特定の健康状態のあるあらゆる年齢の子どもにマスクを使用することは必須ではなく(中略)ケースバイケースで評価されるべきである」とされています。これは成人にも当てはまり、厚生労働省も同様の見解を示しています。
それに応じる形で、民間団体や各自治体から、マスクを着けられない意思表示ができるバッジなどが配布され、たくさんの方が使っています。インターネットなどで探してみてください。法的な力はありませんが、理解を求めたり、交渉の材料にすることができます。
特にメンタルの専門医(精神科医や心療内科医)に至っては、きちんと事情を話せば受診できるはずです。適切な治療によって症状は必ず良くなります。焦らないこと、諦めないこと、そして医療に結び付けることです。必ず乗り越えられます。受診したらぜひ感想を聞かせてください。
【対応のポイント】
コロナ禍での相談の中でも、印象的だったものの1つです。外出できず孤立している方に対してもメール相談は有用です。ご本人だけでは知り得ない情報を提供して外に出られるきっかけを作ると同時に、諦めずに取り組み続けられるよう、継続的に相談を受けることもできるのです。
※ 実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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