メール相談から学ぶコロナ感染拡大時におけるメンタルヘルス(第21回)2021年7月20日
勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義
事例㉑ 親がワクチン接種を拒否しています
(相談者 女性 40代 公務員)
【相談メール】
高齢者である母親の元に、新型コロナウイルスのワクチンを打つ機会が巡ってきました。私としては打ってほしいのですが、副反応や死亡例についてのニュースを見たり、インターネットで「政府の陰謀論」などという記事を読んだりしているらしく、絶対に打たないと言っています。どうすればいいのでしょう?
【回答メール】
お困りのご様子、伝わってきます。新型コロナウイルスのワクチンについては、様々な情報が飛び交っています。
その中には「重篤な副反応」「死亡リスク」といった物々しいものもあります。また、ネット記事にはそれ以上に過激な内容もあるようです。お母さまが心配するのも無理はないでしょう。
この1年、感染への不安や恐怖からメンタル不調に陥る方が増えました。そしてここ最近では、ワクチン接種への不安を訴える方が増えています。
私の患者さんの中にも、ワクチン接種の機会が巡ってきたときに、打つべきか打たない方がいいのか―と悩まれている方は少なくありません。
そんなとき私は、一人の医師として、「基本的に打てるのなら打った方が良い」と伝えています。
また、周囲の意見に振り回されないように、厚生労働省やWHO(世界保健機関)などの公的機関が発信する、信頼できる最新情報を得ることを勧めています。
ワクチン接種は、最終的には本人が決定することです。もちろんノーリスクではないでしょうが、高齢者ということは、感染し重篤化するリスクが高いことも事実です。
それならば、優先順位としては、ワクチンを接種し、感染や重篤化のリスクを下げた方が良いでしょう。気持ち的にも楽になり、メンタル不調のリスクも下がります。
もちろん、日々の感染対策をきちんと続ける必要はあります。信頼のおける情報をもとに、総合的に判断することが大切です。
あなたからの勧めでは従わないというのであれば、他の家族や、特にお子さん(お母さまにとってはお孫さん)から言ってもらうことも1つの方法です。また、専門家からの意見の1つとして、ぜひこのメールを見せてあげてください。
【対応のポイント】
ワクチン接種の最終決定はもちろんご本人がすべきものです。しかし、自由だからこそ悩み、ネガティブな情報を見聞きして不安になることもあります。今回は一人の医師(専門家)の意見を伝えていますが、その情報をもとにご本人がどうするかまでは関知できません。専門家の意見でありながら本人に選択の自由がある―医師としてメール相談をする意義・役割の1つです。
※ 実際に送られてきた相談メールを参考に、相談者のプライバシーを考慮して作成しています。
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