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「治る膵臓がん」を目指す‐膵臓がん早期診断の要として‐

  • お知らせ

 こんにちは。横浜労災病院 消化器内科の関野 雄典(せきの ゆうすけ)と申します。
 当院の消化器内科では、膵臓がんや胆道がんの早期診断に力を入れています。特に膵臓がんに関しては病診連携を通して「横浜労災病院膵臓がん早期診断プロジェクト」を発足し、これまで困難であった膵臓がんの早期診断を目指してきました。これを可能にするのは、地域のクリニックの先生方の「膵臓がんリスク」のご理解と当科へのスムーズな連携によるものであると大変感謝しています。今回は膵臓がん診断の実際を交えて、地域の先生方との連携の重要性についてご紹介いたします。

 

関野 雄典

関野 雄典
消化器内科部長

 

質の高いEUS診療により、小膵がんを見落とさない

 「膵臓がんをいかに早期に診断するか」は全国的にも喫緊の課題とされていますが、小さな膵臓がんを診断するのに非常に重要な役割を担っているのが超音波内視鏡検査(EUS)です。しかしながら、2022年度版膵臓がん診療ガイドラインにおいて、「EUSは習熟した施設で行うことが望ましい」と注釈がなされており、術者間での診断能格差が懸念されています。

 当院は2015年度よりEUSをスクリーニング検査として本格導入し、その検査数と診断能力の向上を目指してきました。ここ数年はコロナ禍の影響で多くの医療機関での内視鏡件数が伸び悩む中、当院では穿刺術や治療を除いた画像診断のみのEUS件数で、2020年度で832件、2021年度は991件を行っており、都内県内でも有数の経験数を持つEUSのハイボリュームセンターです。

 

 

以前にご報告させて頂きましたが、膵臓がんと診断された方の内、一般的に手術可能である診断病期0~II期の割合は20%未満(日本肝胆膵外科学会http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=14)とされています。

前回記事はこちら
 

 我々の施設では、膵臓がんを疑うご紹介を頂いてから、基本的に1週間以内にEUS診断を行う体制を取っております。スピーディーかつ質の高いEUS診療の実現により、II期以下の患者数の割合はコロナ禍でやや悪化したものの2021年度で約45%と標準より早期の診断を達成しています。

 

 

 それでは、実際の症例をご紹介いたします。

 

偶発的に診断した膵上皮内がん

 他疾患の経過観察中に偶発的にCTで膵尾部膵管拡張を指摘されて当科紹介となりました。MRCPでは膵尾部膵管途絶と尾側膵管の拡張像を認めましたが、EUSでは腫瘍として認識されませんでした。早期膵がんを疑い膵体尾部切除術を施行、High-grade PanIN(上皮内癌) p Stage 0と診断しました。

 

 

腹部超音波、MRCPで認識できない膵臓がん

 健診の腹部超音波検査で膵管拡張を認め、当科紹介となりました。MRCPでは軽度の膵管拡張を認めるものの、膵管狭窄部などの不整像や膵腫瘍は指摘できませんでした。

 

 

 EUSで腫瘍性病変として認識可能であり、病理診断の上で膵頭十二指腸切除術を施行、術後最終診断は9mmの膵体部癌、pT1bN0M0 StageⅠAとなりました。このように主膵管の変化がない膵腫瘍に関してもEUSの診断感度は非常に優れていることが分かります。

 

 

他院で既に経過観察とされていた膵管径不整

 この方は2年前に他院で膵管径不整を指摘されておりましたが、すでに1年毎の経過観察となっていました。当院初診時点で膵上皮内癌を疑い病理検査を勧めたいところでしたが前医からの経過もあり、定期フォローの間隔を短くしての当院での診療に納得いただきました。

 

 

 当院2回目のEUSで主膵管径不整部位に一致した乏血性腫瘍として認識されたことから、膵臓がんとしての治療を推奨しました。膵体尾部切除術を行い、10mmの膵尾部がん pT1bN0M0 stageⅠAの結果となりました。このように初回EUS診断で腫瘍が認識されない場合も厳重フォローを行うことで診断の遅れを回避することに繋がります。

 

 

糖尿病増悪を契機に診断した膵臓がん

 クリニック通院中、4か月でHbA1c 6台→8台に増悪を認めたために当院紹介となりました。腹部超音波検査、MRCPで膵管途絶と途絶後拡張像を認め、EUSでも膵腫瘍として認識可能でした。

 

 

 術前病理診断の上で膵頭十二指腸切除術を施行、15mmのT1cN0M0 stageⅠAの術後最終診断となりました。新規の糖尿病診断や、誘因なく糖尿病増悪を認めた際に、気軽にご紹介いただき、膵臓スクリーニングを行うことが早期診断と治療につながった病診連携成功の典型例です。

 

横浜労災病院膵臓がん早期診断プロジェクト

膵臓がん早期診断プロジェクトのご案内

かかりつけの患者さんの中で、以下に該当する方がいらっしゃったらぜひ当科にご紹介ください。

 

以前に「家族歴だけで紹介してもいいのか?」とご相談頂いたことがあります。

 膵臓がんだけでなく、膵臓発がんリスクとなる疾患の除外を行うことが大変価値があることと考えておりますので、上記に該当する方はぜひ一度当科への紹介をご検討ください。数回のやり取りを通じて、糖尿病の初回診断時に膵疾患スクリーニングとしてご紹介いただけるクリニックの先生も増えつつあり、大変感謝しております。
 当科でMRI、EUSを主軸とした膵臓発がんリスクの評価を行い、それに基づいた診療スケジュールの立案を行います。先生方への情報をフィードバックさせて頂き、可能なクリニックにおいては共同しての経過観察について提案しております。

 

  

予約は通常の紹介枠でも構いませんが、他に「膵紹介」枠も設けており、予約を取りやすい環境を整えております。膵管拡張や腫瘍マーカー上昇ではなく、膵臓がんを強く疑う腫瘍や黄疸例など、緊急での受診が望ましい場合には地域医療連携室を通して、当科医師に直接ご依頼頂く形で対応しております。

 

 

<予約申込票>
 下記の当院ホームページURLより印刷し、使用してください。
https://www.yokohamah.johas.go.jp/community_medicine/introduce/

 

膵臓がんリスクをお持ちの方に、人間ドックに膵臓がんオプション検査を用意しています

人間ドックのご案内

 糖尿病増悪や腫瘍マーカー上昇などの方は、当院初回診療時に異常がなかった方でも再度ご紹介いただいて構いません。膵臓がん家族歴でご紹介いただき、初回診療時にEUS検査を含めて異常がなかった方など、保険診療で定期的なEUS検査を行う対象にならない方に対しては、自由診療での定期検査も対応いたしますが、当院では健診部での人間ドックに膵臓がんオプション検査を用意しています。膵臓専門医が背景リスクを含めたレポートを作成しておりますので、こちらの利用も促していただけますと幸いです。

  

最後に

 「治る膵臓がん」を達成するためには、先生方からの患者さんの拾い上げと私たちとのスムーズな病診連携が必要不可欠です。
 患者さんごとに膵臓がんリスクを評価し、診療スケジュールの立案とかかりつけの先生方へのフィードバックを通して、多くの膵臓がん患者さんに貢献できるように、これからも努力して参ります。

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