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「腎臓内科」どのようなイメージをお持ちでしょうか?

  • お知らせ

はじめまして。横浜労災病院腎臓内科の神山貴弘と申します。
突然ですが、「腎臓内科」と聞くと先生方はどのようなイメージをお持ちになりますでしょうか?
「糖尿病や高血圧の患者さんが、いよいよ透析が必要になりそうになったら紹介する科」ですとか、「尿検査を出してみると多少の潜血や蛋白が出る人は結構いるので、どうなったら紹介した方が良いか分からない」など仰る先生もいらっしゃるかもしれません。
今回は、簡単に「1.当院腎臓内科のご紹介、2.診療している疾患、3.どのようなタイミングでご紹介いただきたいか」についてお話しさせていただきたいと思います。

 

神山 貴弘

神山 貴弘
腎臓内科副部長

 

1.当院腎臓内科のご紹介

当科は常勤医師5名(うち1名は他院へ出向中)、非常勤医師1名の合計6名体制で腎臓病診療にあたっています。

外来は月曜日から金曜日まで毎日行っており、1日あたり1~2名ずつ地域の先生方からの紹介枠を設けています。

腎生検などの都合で火曜日、木曜日、金曜日は午前中のみですが、それ以外は午後も外来診療を行っております。
原則予約制をとっており、ご紹介については平日8:15~17:00に予約専用電話番号(045-474-8882)までご連絡いただくよう患者さんにご案内ください。また、連携登録をされている医療機関につきましては、専用のダイヤルがありますので、下記をご参照ください。

 

「数ヶ月以内の急激な経過で腎機能が増悪している」「多量の蛋白尿が出ておりネフローゼ症候群の可能性がある」などお急ぎの場合は、平日は毎日on call当番医がおりますので病院代表経由でご連絡ください。

患者さんの経過、腎機能、尿所見、ご年齢などから腎生検による病理学的な確定診断が必要と判断した場合は、積極的にエコーガイド下針腎生検を行っております。毎週二枠ずつ腎生検枠を設け、年間施行件数は約30-40例程度と活発に行っています。

なかにはCrystalglobulin-induced nephropathy、 TAFRO症候群といった非常に珍しい疾患の診断に至ることもあり、学会発表も盛んに行っております。2021年日本腎臓学会主催東部腎臓学会、2022年日本内科学会主催内科関東地方会では、それぞれ優秀演題賞を受賞しました。

腎生検で得られた所見については病理医と定期的にカンファレンスを行っており、臨床所見とすり合わせた上で最終診断を下しています。その上で個々の患者さんの年齢や合併症を考慮し、加療を開始しています。

 

2.対象となる疾患について

当科の主な役割として、「①腎不全によって腎代替療法(透析や腎移植)が必要になってしまうのを防ぐ、または可能な限り時期を遅らせる」「②腎疾患による影響で他臓器への悪影響が出ないようにする」ことだと考えています。
 具体的な対象疾患としては下図に挙げたようなものがございます。

このように当科が対象とする疾患は多彩です。

厄介なことに、腎疾患は無症状か、電解質異常による倦怠感や筋力低下のように非特異的で分かりにくい症状で発症することが多いです。

しかしながら、上図に挙げたような疾患は病変の首座が糸球体か尿細管か、あるいは腎臓以外の臓器かという違いに加えて、病因が高血圧や糖尿病などの血管性か免疫異常による炎症性変化なのかによっても治療内容や予後が大分異なります。

代表的な疾患を例に、簡単にご紹介したいと思います。

 

①IgA腎症

典型的には元々扁桃炎になりやすい方が健康診断で偶然尿潜血反応を指摘されたり、感冒後に肉眼的血尿が出現したりすることをきっかけに開業医の先生にかかられ、所見が持続することなどから当科にご紹介いただくパターンが多いです。

腎生検を行った例の約30%程度をこの疾患が占めると言われています。

そのまま確定診断がなされず、治療を行わなかった場合は20年間で約40%の方が末期腎不全に至ります。

しかし腎生検によって確定診断を行うことができれば、多くの場合扁摘パルス(口蓋扁桃摘出術+ステロイド治療)を行うことで数十年を超える予後が期待できます。

(腎生検については、慢性的な経過によって既に腎萎縮がみられる場合などはメリットよりも出血性合併症などのデメリットが上回るため、敢えて行わないこともございます)。

 

②顕微鏡的多発血管炎

IgA腎症と同じように血尿を中心とした尿所見異常をきたす疾患ですが、経過や進行がより急激です。

具体的には、当科受診のきっかけが健診での尿所見異常ではなく、感冒の数週~数カ月後に倦怠感、しびれ、乏尿、浮腫などが出現し、クレアチニンの急激な増加がみられることが典型的です。発症頻度も100万人あたり年間18人程度と比較的稀であるため、当科を受診されるまでにかなり病状が進行してしまっている場合も少なくありません。

確定診断のための腎生検は必須ではありませんが、当科では可能な限り病状進行の程度を評価するために行っております。また、従来は高用量のステロイドに加えてシクロフォスファミドという比較的副作用の多い免疫抑制剤を使用しなければなりませんでしたが、2013年より比較的副作用の少ないリツキシマブが保険適応となりましたので、当科でも症例に応じて使用しています。

 

3.どのようなタイミングでご紹介いただきたいか

上記のように同じ尿所見異常でも多彩な疾患があるため、まずは先生方が普段ご診療されている患者さんについて、日常の血液検査に腎機能の指標であるクレアチニンやeGFRを加えたり、定期的に尿検査を行っていただきたく存じます。

そこで腎機能障害や尿所見異常があればご紹介いただきたいのですが、どの程度の状態であれば特に優先してご紹介していただいた方が良いか、というのは分かりにくいと思います。
 紹介基準の参考資料として日本腎臓学会から下表のようなものが提示されています。

これは腎機能障害が進むにつれて、あるいは尿蛋白が増加するにつれて緑色→黄色→赤色と各種リスク(死亡、心血管疾患、末期腎不全)が増加するという従来の表をもとに作成されたものです。

CKD stage 3以上まで進行している場合、あるいは腎機能障害がなくても高度の蛋白尿がある場合は特に一度ご紹介していただきたく存じます。

実際に腎機能は通常どのような経過を辿るかというと、こちらのグラフのように、もちろん加齢とともに低下していくのですが、元々の腎機能が低い人ほど早く進行することがいわれています。

具体的には、下表のように末期腎不全に至るまでの期間はCKD ステージ3で約20年ですが、ステージ4になると約5年まで短縮してしまいます。

当院のある神奈川県の状況については、神奈川県CKD対策連絡協議会の報告を参照すると約94万人のCKD患者さんがいることが推計されています。

その内訳は下表のようになっており、人口の約10人に1人がCKD、約10%が末期腎不全へのリスクが高いステージ3以上、上表のレッドゾーンに相当する患者さんは約8万人もいらっしゃることが概算され、決して稀な疾患ではないことがわかります。

尿所見異常の有無に関わらずCKD G3以上である、または腎機能障害がなくても尿蛋白が続く場合は一度ご紹介いただきたく存じます。

初診される際にお願いしたいこととしまして、過去の検査結果(かかりつけ医や健康診断での血液検査や尿検査の結果)を、分かる範囲で結構ですのでお持ちいただけますと幸いです。腎臓病の原因と今後の見通しを推察するために非常に重要な手がかかりとなります。

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