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当科の極小切開硝子体手術 患者負担軽減を目指した27ゲージの選択

  • お知らせ

はじめまして、横浜労災病院眼科の佐藤 美紗子(さとう みさこ)です。
当科では、地域の中核病院として白内障、網膜硝子体疾患、緑内障をはじめとした幅広い領域の眼科疾患の手術、治療を行っています。
特に中でも、当科が得意とする網膜硝子体疾患の手術治療は早期に治療介入することが患者さんにとっても視力維持においてベストなことがあります。
そのためには地域の先生方とさらに密に連携をさせていただくことが重要と考えますので、是非当科での治療の取り組みをご覧いただき、該当する患者さんがいらっしゃいましたらご紹介ください。

 

硝子体とは?

硝子体は、体積が約4mlの透明なゲル状組織です。全眼球容量の約4/5を占め、重量の99%が水、0.9%が低分子物質(電解質、糖、アスコルビン酸など)、0.1%が高分子物質(typeⅡコラーゲン、ヒアルロン酸など)です。硝子体は透明体、眼球の形態保持、またクッションの役目として働き、眼組織を外力から保護しています。

 

網膜とは?

網膜はカメラでいうフィルムに相当します。
角膜と水晶体を通過した光は網膜上に焦点を結びます。網膜の中心部を黄斑と言い、錐体細胞が密集しており、中心視力と色覚を担っています。

網膜の厚みはわずか0.1~0.4mmであり、特に黄斑の中心にあたる中心窩は0.05mmととても薄くなっています。網膜は10層からなり、視細胞は約1億個あります。
視細胞で感知された光が電気信号に変換され、視神経を通じて外側膝状体、大脳後頭葉の視覚領域へと伝えられます。

 

網膜硝子体疾患、硝子体手術とは?

代表的な適応疾患としては、黄斑上膜、黄斑円孔、増殖糖尿病網膜症、裂孔原性網膜剥離、硝子体出血(糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症・加齢黄斑変性症などによる)、眼内レンズ落下などが挙げられます。
病態はそれぞれ異なりますが、眼の内側から硝子体カッターや鑷子といったものを用いて、出血などの混濁した硝子体や、増殖した網膜硝子体組織の除去、また網膜を牽引している膜状組織の除去処置が必要になるため、硝子体手術が必要になります。

しかし、上記に挙げられる疾患でも、手術ではなくレーザー治療や薬剤の硝子体注射といった治療が適している病態のこともあり、専門の医師による診察が必要です。
判断に迷われた際でもまずは当科に紹介頂ければこちらで適応判断をさせていただきます。

 

硝子体手術は難しい?

先生方の中には「硝子体手術=とても繊細で難しい」と思っている方も多いと思います。
そのため、手術をためらい、結果として症状が悪化してから当科に紹介をいただくこともありました。
現在は治療法も確立し、機械や器具も様々に改良されたため、以前よりも安全に手術を行うことができるようになりました。

 

患者負担の小さい極小切開硝子体手術

手術は局所麻酔で行います。
手術時間は症例によって異なりますが約30分~60分です。
病状によってはそれ以上かかることもあります。

まずは、眼球に4か所の創口を開けます。
1か所に眼還流液を流し、眼内圧を一定にして術中の眼球形態を保ちます。
別の箇所から眼内を照らす照明器具や硝子体カッターを挿入して、硝子体の混濁や膜状組織を切除して吸引します。
カッターで切除した分量だけ眼内に還流液が流れ、置き換わります。
疾患によって、網膜上に張った膜をピンセット様な器具で除去や、網膜にレーザー照射を行います。
また網膜剥離や黄斑円孔などの疾患は還流液をガスに置き換えて手術を終えます。
白内障がある場合には同時に手術を行います。

当院では、27ゲージというわずか0.4mmの小切開での硝子体手術システムを採用しています。
切開に使うゲージ数は執刀する医師毎の治療スタンスや考えが反映される部分です。
小さくなればなるほど、当然手術難度は高くなりますが、患者負担を最小限にとどめることが出来るため、当科では27ゲージを選択しております。

 

《黄斑上膜》

特発性のものと、網膜剥離やぶどう膜炎に続発するものがあります。
黄斑上膜を生じたことにより網膜が牽引され、視力低下や歪視の症状を生じます。
硝子体手術を行い、黄斑上膜をピンセットのような鑷子にて剥離、除去します。

 

《黄斑円孔》

中心窩に円形の欠損を生じる疾患です。
自覚的には視力低下と中心暗点を認めます。
硝子体手術を行い、網膜の一番内側の層の内境界膜を剥離、除去し、眼内に治療用のガスを入れます。

 

当院へ紹介のタイミング

硝子体手術は以前と比べ、安全性も高く、受けやすい治療となりました。
しかしながら、世間で多く行われている白内障手術の「手術翌日からすっきり見える」というイメージとは異なり、術後の視力回復はゆっくりであり、また病態によっては見え方を回復させることはできずに、進行の予防、失明の予防を目的とした手術となることもあります。

また、「逆の眼は見えているから大丈夫」「手術が怖い」ということから受診のタイミングを逸し、手術を行っても十分な視力回復が得られないこともあります。
また高齢化も進み、手術を行うか迷う方もいらっしゃると思います。

手術適応か迷う場合でも一度ご紹介いただければと思います。
詳しく検査を行い、病態を正確に把握したうえで、病態のみならずご本人の希望も聞きながら治療について相談してまいります。

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