初めまして、横浜労災病院 小児科副部長の小笹 浩二(おざさ こうじ)と申します。
専門はアレルギー疾患で、食物アレルギー・気管支喘息・アトピー性皮膚炎・薬剤アレルギーなどを診ています。
今回は小児科の中で力を入れているアレルギー診療、特に食物アレルギーについて詳しく紹介させていただきます。
当院は「こどもセンター」として「小児科」「新生児内科」「小児外科」が合同で、周産期から中学生までの外科疾患も含めた診療をおこなっております。医師数も20名(うち1名はICUに出向)と数多くおり、その中で小児科専門医9名、新生児専門医3名、小児外科専門医1名と専門医が多数在籍しております。
横浜市北部地域を診療圏とする地域の中核病院で、横浜市小児救急拠点病院にも指定されており、24時間365日小児科医が救急対応をしております。地域の先生方からの紹介は必ずお受けしており、救急搬送依頼も断ることはほとんどなく対応しています。
2019年は小児科1188名、小児外科82名、新生児内科(NICU)202名の入院がありました。
当院ではアレルギー診療に力を入れており、その中でも多くの患児を紹介していただいている、食物アレルギーを中心に述べさせていただきます。
日本での小児の食物アレルギーの有病率は、乳児が7.6%-10%、2歳児が6.7%、3歳児が約5%、保育所児が4.0%、学童以降が1.3-4.5%と報告されており、非常に多くの患児がいることがわかります。
多くの患児が特別な治療もなく、小学生になるまでに多くが寛解すると考えられていましたが、近年それを否定する報告も多くあり、特に抗原特異的IgE高値、長期間の完全除去、アナフィラキシー歴、などがあると寛解の可能性が低くなるとされています。
「食物アレルギー診療の手引き2020」が出されており、おおむねこれに沿った診療を行っています。
まずは初診の段階で、詳細な問診をおこない、本当に食物アレルギーなのか、食物アレルギーだとしたら、原因抗原は何なのかを調べていきます。その時点で必要があれば血液検査をおこないます。問診結果と検査結果から、食物アレルギーの診断がついた際には、今後の方針についてご家族と相談します。食物アレルギーの診断・摂取可能量の確定・除去解除などを目的として、食物負荷試験を行うことがあります。
食物負荷試験とは、実際に病院で食物を摂取してもらい、症状が誘発されるかを確認する検査です。近年、食物アレルギーに関してすべて食物負荷試験という傾向もありますが、すべての患児にとって食物負荷試験が必要なわけではありません。負荷試験のメリット・デメリットのお話をさせていただき、負荷試験をしないのであれば、どういった形で経過をみていくのかも説明します。
毎週水曜日と金曜日の週2日負荷試験を日帰り入院で行っています(外来での負荷試験は一部の例外を除いて行っていません)。負荷試験の予約をとる外来の2~3週間以内に負荷試験をおこなうことが可能となっています。
負荷試験当日は、10時過ぎに外来に来院してもらい、体調チェックをしてから病棟へ入っていただき、11時から負荷試験を開始します。多くの場合が1時間間隔で2回の摂取を行い、摂取から2~3時間後に症状がなければ帰宅となります。
ご紹介いただいた患者様は、以下のフローで治療にあたります。
当院にご紹介いただく場合は、鼠経ヘルニア同様、下記の通りご連絡ください。
前述の通り、早期の治療開始が重要となりますので、紹介に迷われるような場合でも、まずはご連絡をいただきたいと考えております。
小児臍ヘルニアの場合は、ご連絡から1週間以内に外来受診予約を、手術は平均1か月程度で入院を受け付けております。圧迫療法は初診時から開始しております。
その他、治療にお困りの臍炎や臍肉芽腫のご紹介も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
コントロール不良の気管支喘息の評価を行っています。呼吸機能検査・呼気NO検査・吸入手技確認などをおこない、状態が安定したら、紹介元での治療を継続していただいています。
外来で時間をかけて病気の説明、軟膏指導をおこないます。重症度が高い症例については、1週間ほどの教育入院も行っています。
なかなか対応をしている病院がありませんが、当院では薬剤アレルギーに対する負荷試験も行っています。小児では本当の薬剤アレルギーではない可能性も高く、負荷試験を行うことで、薬の制限を解除できている症例が多数認められています。
アレルギー疾患であれば、なんでもご相談いただきたいと思います。月曜・水曜・木曜の午前中はアレルギー専門医による初診を行っておりますので、ぜひご紹介ください。
その中で食物アレルギーに関して以下に1つでも当てはまる患児については、寛解できずに経過する可能性が高い症例ですので、ご紹介いただきたいと思います。