MENU

    • トップ
    • 地域連携NEWS
    • 患者さんに寄りそう植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)治療を -デバイス治療は植込みがスタートライン-

患者さんに寄りそう植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)治療を -デバイス治療は植込みがスタートライン-

  • お知らせ

横浜労災病院 不整脈科 小和瀬 晋弥(こわせ しんや)と申します。
このたびは当院の不整脈治療部門の紹介をする機会をいただきました。不整脈治療分野において大きな柱としてカテーテルアブレーション治療・デバイス治療があります。カテーテルアブレーション治療についてはその責任者である不整脈治療科 長田淳部長に次回紹介していただきますので、今回は私が担当しておりますデバイス治療分野につきまして紹介させていただきます。

 

植込み型心臓電気デバイスについて

植込み型心臓電気デバイスとは心臓不整脈に対する治療を行う植込み機器の総称で、Cardiac Implantable Electronic Devices(CIEDs)と言われ、下記の6つがあります。

①永久ペースメーカー(リードレスペースメーカー含む)
②両心室ペースメーカー(CRT-P)
③植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator, ICD)
④皮下植込み型除細動器(sub-cutaneous ICD : S-ICD)
⑤両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)
⑥植込み型心電図記録計(Implantable Cardiac Monitor : ICM)

今回は、これらを使用する疾患群を4つ紹介します。

 

①徐脈性不整脈

【使用デバイス:永久ペースメーカー】

ペースメーカーの最も基本的な機能は心臓の電気信号を感知し脈拍数を見張ること、徐脈だと判断した場合は電気信号を送り心臓を動かすことの2点になります。従って徐脈性不整脈に対してその能力を発揮します。
徐脈性不整脈を引き起こす疾患としては大きく下記の3つがあります。

このほかに電解質異常や薬剤の副作用による二次性のものが考えられます。

自覚症状のある徐脈は基本的には治療の適応となりますが、徐脈というとどうしても失神というイメージがありそれがなければ治療の対象と考えられてない場合が存在します。もちろん失神も重要な症状ですが、もう一つ徐脈に伴う重要な症状が息切れなどの心不全症状です。徐脈は血液循環ポンプの心臓の回転数が落ちますので循環量が低下し労作時の息切れなどが生じることがあり、この場合もデバイス治療の適応となります。

 

②頻脈性不整脈

【使用デバイス:植込み型除細動器/皮下植込み型除細動器】

頻脈性不整脈に関しては心房性(たびたび上室性と言われます)と心室性があり、上室性頻拍はカテーテル治療の対象となることが多いです。
一方、心室性不整脈は致死的不整脈であること、カテーテル治療・薬物療法では再発のリスクを完全に消失させることは出来ないため、起きてしまったときのバックアップが必要となります。これがICDです。体の中に植え込まれるフルオートのAEDだと思っていただくとイメージがつくと思います。 

T1がICDが心室頻脈(VT)であると認識したマーク、HVが電気的徐細胞が行われた部分であり、その後VTは停止していることがお分かりいただけるかと思います。

 

③左室同期不全による心不全

【使用デバイス:両心室ペースメーカー/両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器】

心不全にはいろいろな病態がありますが、デバイス治療の適応となるのは左室同期不全という病態です。これは伝導障害により心臓内の電気信号の伝達にばらつきが生じるため作業心筋の働くタイミングがずれてしまっている状態です。この病態では心電図に伝導障害の所見が見られ、典型的なものだと左脚ブロック波形を呈します。

この治療には心室再同期療法という方法を行いますが、これがいわゆる両心室ペーシングというものです。右室リードと左室リードをそれぞれ右心室と左室の外側にある冠状静脈(右室と違い左室内に異物を留置することはリスクが高い)にリードを留置し両側から同時にペーシングすると同期不全が解消するというものです。

うまく効果が発揮できると30%程度であったLVEFが60%ぐらいまで回復する例も見られます。

 

④失神

【使用デバイス】
診断に植込み型心電図記録計を使用。
心原性失神の診断であれば原因によってその他のCIEDsを使い分ける。


失神とは何らかの理由によって生じた脳血流低下により一過性に意識消失を起こすが、その状態が自然にかつ完全に回復するものと定義されます。失神というと頭の病気というイメージが強いですが、失神の定義に当てはめると頭蓋内イベントでの失神は考えにくく、心原性失神もしくは神経調節性失神を考えなければなりません。そのうち心原性疾患は危険度が高いといわれ、見逃してはいけない病態です。
弁膜症・大動脈解離・肺血栓塞栓症などの循環が低下する疾患でも失神は生じますが、これらの疾患では多くの場合心電図や心エコーなどの検査で何らかの異常が見つかることがほとんどです。しかしながら不整脈による失神は、意識回復後には不整脈が正常化していることがほとんどで、診断がつきにくいことが多いです。従来ですとHolter心電図などで検査していましたが、Holterではつけたときに何も起こらず診断が出来ないということが多々ありました。

近年、ICMという皮下に植え込む心電図記録計が使えるようになり、当院では局所麻酔での外来手術も可能です。来院から1時間程度で手術説明、実際の手術(デバイスが非常に小さくなったため手術自体は5-10分です)、機器の説明などが終わります。
この機械は24時間365日心電図を記録し(電池寿命が3-4年程度)、イベントのところのみメモリーに残すという機械です。これにより長期間のモニタリングが可能となるため診断率が上がります。また、この機械を入れて失神の原因となる不整脈がなければ心原性は否定的という判断となり患者さんの安心にもつながります。 

 

当院での手術実績

当院での、過去10年間のデバイス手術の実績は以下の通りです。
過去10年間で2,000例を超える手術実績があり、これをお読みの先生方の患者さんへ当院での治療を自信をもって勧めていただけると考えています。

 

術後の管理

これらのデバイスは適応を判断し植込み手術をしたときから治療が開始です。
私は過去に最低心拍数の設定を50→70回/分に変更しただけで劇的に心不全症状が消失しQOLが著明に改善した患者さんを経験し、デバイスの設定の怖さと責任を感じました。そのため、植込み後のデバイス外来では患者さんのQOLがよりよくなるような設定を考えていきたいと考えております。それには医者の力だけでは出来ず、Co-medicalの協力が必要です。当院ではデバイス治療に興味を持ってくれるCo-medicalを集めて勉強会などを行い一昨年より日本不整脈心電学会が認定する植込み型心臓デバイス認定士デバイスの資格を有するスタッフを中心にデバイスチームを結成することとしました。
<参考リンク>https://www.yokohamah.johas.go.jp/column/2020/04/post-68.html

 また、当院では設定の最適化を考えると共に、可能な限り遠隔モニタリングシステムを活用しデバイスの異常を素早く察知し対処できるような体制を構築しております。

 

先生方へのメッセージ

不整脈チームは火・木曜日が手術日なので月・水・金に不整脈の初診外来があります。
下記に該当する患者さんがいらっしゃれば、是非不整脈外来へご紹介ください。

  • 不整脈全般
  • 動悸などの症状
  • 頻脈発作
  • 脈がゆっくりめで経過観察で良いのかどうか判断に悩む場合
  • 失神の精査
  • 心電図異常(右脚ブロック・左脚ブロック・期外収縮など)


ご紹介いただくときには不整脈外来の予約を取っていただけますと幸いです。

一覧へ戻る