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4分野で高い専門性を誇る整形外科② -全ての脊椎脊髄疾患を対象とする脊椎脊髄外科ほか-

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横浜労災病院 整形外科の三好 光太(みよし こうた)と申します。
当院の整形外科の診療について2回に分けてご紹介しております。
当科では4分野で高い専門性を誇っており、前回は「人工関節外科」における取り組みをご紹介しました。
今回は、「脊椎脊髄外科」「手・末梢神経外科」「運動器外傷センター」における診療内容をご紹介いたします。

 

三好 光太

三好 光太
整形外科・脊椎脊髄外科部長

 

全ての脊椎脊髄疾患を対象とする脊椎脊髄外科

当科について

当科は日本脊椎脊髄病学会の脊椎脊髄専門医基幹研修施設に認定され、脊椎脊髄を専門とする医師約8名(うち3名は日本脊椎脊髄学会認定指導医)で診療を行っており、この体制は県内トップクラスです。

 当科の手術を含む診療の大きな特徴は、頭頚移行部から仙椎(骨盤)まで全ての脊椎領域において、あらゆる疾患に対応が可能であることです。
椎間板ヘルニアや狭窄症といった一般的な変性疾患から、靭帯骨化症、環軸椎脱臼、小児側弯症、小児を含む先天疾患の脊椎病変や、成人の脊柱変形、脊髄髄内腫瘍から転移性腫瘍まで含む脊椎脊髄腫瘍など、高度な知識と技術が必要な疾患において、診断から保存治療・手術治療まで、豊富な経験と実績があり、全国から数多くの来院があります。

 

当科の治療方針

外来初診時、検査入院時、治療方針や手術の検討時などには必ず当科内のカンファレンスにおいて全員で議論し、方針を共有します。

神経障害が無い変性疾患例については保存療法を優先としております。他の脊椎専門施設と同様に多種ブロック治療も駆使しますが、当科では実施施設の非常に少ない頚部神経根ブロックや腰部椎間板ブロックも導入しており、頸椎症や椎間板ヘルニアによる強い根性疼痛例や強い腰痛例に対し大きな効果を得ています。
また、腰椎椎間板ヘルニアに対する新たな治療法である椎間板内酵素注入療法も実施しており、手術以外の方法で治療を行いたい方に有効な治療法です。

 

患者負担を最小限に考えた手術療法

手術療法においては、全脊椎レベルに対して全ての脊椎手術アプローチが実施可能で経験があり、症例に応じた最も適切な術式選択を心がけています。
全手術例において上記認定指導医が執刀医または第一助手として必ず関わり、万全な体制で手術を行っております。複数の大学病院を含めた基幹他施設からの手術執刀招聘も数多く経験したメンバーがおりますので、安心してご紹介ください。

手術を行う際には、身体的侵襲の軽減のため術前自己血貯血を必要例に準備するだけでなく術中自己血回収装置も使用し、移植骨の不足例に対しては全国的にも限られている院内骨バンクも整備・使用しています。

さらに、より高度な脊椎手術をより安全性を高く行うために、脊椎専用カーボン製手術台2台、術中コンピューターナビゲーションシステム、脊髄神経電気モニタリングシステム、高精細手術用顕微鏡、高解像度脊椎手術用内視鏡、移動式3D透視装置、手術中超音波診断システムなどの機器を整備・駆使し、侵襲の軽減に努めています。

また最近の脊椎外科の潮流としては、内視鏡下手術、BKP(椎体形成)手術、経皮的スクリュー挿入法(PPS)や小侵襲腰椎前側方固定術(LIF)といった手術の低侵襲化と病態解明や手技の進歩による脊柱変形手術の進歩がありますが、当科では全て初期より導入し、多数実施しています。

 
【症例1】骨粗鬆症性椎体骨折後の著明な後弯変形

偽関節となり、転位も来した第二腰椎を含む多発圧迫骨折。
激痛で立位困難、膀胱直腸障害を含む馬尾神経麻痺、GERDの悪化があり、矯正固定術施行し 、歩行も可能となった。

 
【症例2】骨系統疾患(先天性脊椎骨端異形成症)に伴う環軸椎脱臼の小児例

進行性の四肢麻痺を来し、後方除圧固定術施行し、日常生活に支障は無くなった。
術前は環軸椎レベルにおいて著明な脊髄圧迫所見があったが、術後は骨癒合も得られ、除圧も十分である。

 
【症例3】特発性側弯症

装具療法実施したが進行し、14歳時に矯正固定術施行。

 
【症例4】頸髄髄外腫瘍

徐々に歩行困難にまで至った痙性四肢麻痺となり、摘出術施行、回復した。
術後は圧迫されていた脊髄は形態的にも回復している。

 
【症例5】腰椎転移性悪性腫瘍(乳癌)

大きな骨転移は腰椎のみであり、腫瘍脊椎骨全摘術(TES)施行、術後経過は良好である。 

 

腕神経叢損傷の専門診療も担う手・末梢神経外科

当科は日本手外科学会認定基幹研修施設に認定されており、疾患や外傷による上肢(肩・肘・手・手指)機能障害に対する専門的診療を行っています。特に、四肢の末梢神経障害に対しては、詳細な神経学的診察と補助的に針筋電図・神経伝導検査など電気生理学的検査や画像検査を行うことにより、高度な専門性のある診断・治療を行っています。

当科の目標は、(上肢)機能再建であり、主な治療法として、装具やブロック注射などの保存的治療を選択し効果が不十分な場合や強い麻痺が生じている場合にはマイクロサージャリーを含めた手術治療を行います。さらに、神経修復が困難な方には腱移行術などで機能再建を図っています。

交通事故などで生じる腕神経叢損傷は、末梢神経損傷のなかでも高度な専門的診断・治療が必要です。一方で、肩関節脱臼など低エネルギー外傷に伴う腕神経叢不全麻痺は、保存的治療が基本です。また、真の神経性胸郭出口症候群・肘部管症候群・手根管症候群・尺骨神経管症候群・足根管症候群などの絞扼性神経障害や、特発性前・後骨間神経麻痺など神経痛性筋萎縮症についても、正確な神経学的診察と補助的電気診断のもと、必要な方には手術的治療を行っております。

その他、一般的な手の疾患・外傷(橈骨遠位端骨折・槌指・弾発指・デュプイトレン拘縮など)の治療も積極的に行っています。

麻痺性疾患でお困りの場合には、水・木曜日午後の専門外来へご紹介ください。

 

手術の必要性を十分検討する運動器外傷センター

 

手術した方がよい骨折と手術しなくてもよい骨折

2018年7月から運動器外傷センター長をつとめる小林誠と申します。
当院では近隣のクリニックからご紹介いただく身近な骨折症例が多数を占めます。そこで、ある骨折に手術が必要であるかどうかを決める時の考え方をご紹介致します。

 

1.手術をしなくても骨がつくか?

転位のある大腿骨頚部骨折(図1)は、そのままでは骨がつかない骨折の代表ですので、もともと歩けていた方では手術をするのが普通です。
普通は骨がつかないと何らかの不具合が起こるものですが、鎖骨骨折は例外です。
鎖骨骨折の偽関節(図2)は肩の拘縮さえなければ無症状であることがほとんどです。 

骨幹端・骨端の骨折は海綿骨主体なので癒合しやすく、骨幹部の短斜骨折・横骨折は癒合しにくいことで知られています。
骨片の転位が大きいほど骨癒合しにくいのは確かですが、骨膜の連続性が保たれているかどうかがポイントです。

 

2. そのままの形で骨がついても困らないか?

下肢の骨ではある程度以上の内反変形が残ると膝や足関節に負荷がかかって将来関節症を発生するリスクが高まります。
上肢は荷重肢ではないので変形癒合による関節症発生のリスクは小さいです。

 容認できない変形があれば徒手整復を行ない、整復位が外固定で保てれば外固定、保てなければ内固定、というのが原則です。
非手術治療を若手に指導するのは面倒であるため、「何でもかんでも手術」という風潮にあるのは嘆かわしいことです。 

 

3. 骨がつくまで待てるか?

転位の小さい成人脛骨骨折なら、2ヶ月程度の外固定で治ります。
しかし、松葉杖やギプスを2ヶ月も使えない事情があれば内固定手術を選びます。 

 

最後に

入院・手術は患者さんにとって一大事ですので、本当に必要な場合のみに手術をするという方針でやって参ります。
骨折の治療で迷われた場合には、どうぞご遠慮なくご相談下さい。

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